PINK FLOYD - MONTREUX 1970 DAY 1 RECORDER 2 & 3: NEW TRANSFER(2CD) [Sigma 235]

PINK FLOYD - MONTREUX 1970 DAY 1 RECORDER 2 & 3: NEW TRANSFER(2CD) [Sigma 235]

販売価格: 3,800円(税込)

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商品詳細

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Super Pop 70 VII, Casino de Montreux, Montreux, Switzerland 21st November 1970

1970年11月21日、スイス・モントルー。ピンク・フロイドの音源ファンにとってこの日の録音はヴィクターなる人物が当日の会場で実況録音した超高音質AUD録音が有名です。西ドイツ製の可搬型デッキUHER 4200に、その形状から" クジラ "として親しまれた名機Sennheiser MD-421マイクを接続してレコーディングされたその高解像サウンドは当Sigmaレーベルから2010年12月に『VICTOR'S MONTREUX (Sigma 60)』としてプレス音盤化され、一躍70年フロイド音源のトップ録音として大きな話題を呼びました。

その後、このヴィクター録音が抱えていたピッチの狂いやキュルノイズのリペア、果てはテープ劣化が目立っていた「Cymbaline」の冒頭2分間に約140箇所ものドロップをひとつひとつ丹念に処理する事で、耳にした誰もが大きな手応えを感じる究極のレストア版ソースがフロイド音源サイト" Harvested "から公開され、これが『TOO LATE FOR MIND EXPANDING (No-Label)』として2011年2月にプレス音盤化。ただでさえDATで録った様な最高音質のヴィクター原音に最高の品質を備えさせる事に成功したこの驚異的なアッパー盤は、2019年現在でも70年11月21日・モントルー初日のフラッグシップ・タイトルとなっています。

そんな稀代の傑出盤『TOO LATE FOR MIND EXPANDING』ですが、Harvestedがヴィクター録音からこのアッパー・ソースを制作する際、当然ながらその補填素材として同日の別録音を使用していた訳です。特にヴィクター録音がテープチェンジ等によって抱えていた幾つかのシーン欠落については、その補填に見合うだけの音質も備えていなければどれだけ完璧にデジタル結合させてもその区間だけ音質差による違和感が生じてしまいます。しかし『TOO LATE FOR MIND EXPANDING』をお持ちの方は改めて確かめて戴きたいのですが、あれを聴いて補填部分の
音質差による違和感を感じた事があるでしょうか? ...そう、どのシーンを聴いてもパーフェクトに音が揃った一気通貫サウンドしか出てこないため、むしろ補填されていた箇所がどこなのか思い浮かばない方が多い筈です。

今回このSigma最新作でスポットが当てられたのは、そんな極星のヴィクター録音を本体に負けない秀逸サウンドで力強くバックアップしたRecorder 2と3です。『TOO LATE FOR MIND EXPANDING』アルバムが絶対的定番となっている現在、この2つの同日録音はその存在すら歴史の波に消えつつありますが、何故これに今再びスポットが当てられたのか、その鍵となる特徴と概要をそれぞれ簡単に書き出しておきましょう。


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【Recorder 2】 :
ジュネーブに本局がある放送局RTS(* RADIO TELEVISION SUISSE)の収録による、放送されなかったオフ・エアのモノラルSBD録音。フランスのアナウンサーによる冒頭のバンド紹介部分を除き、元来ステレオ収録だったものがモノラルにダウンミックスされているのが特徴です(※ 恐らくですが、RTSがまだ局としてステレオ業務放送に対応していなかった為のダウンミックスかと思われます。英国BBC Radio 1も1971年にようやくステレオ業務放送を開始している時代です)。このRecorder 2は既発盤『THE GOOD... THE BAD (fa 033)』(ディスク1)によってその存在が広く知られましたが、ソース登場時は翌22日・モントルー2日目の音源と信じられていました。しかし2010年にヴィクター録音が登場した事により、現在では全て21日・モントルー初日の演奏であると判明しています。音質秀逸な放送用SBDです。

【Recorder 3】 :
ヴィクター録音とは別の同日AUD録音ソース。『THE GOOD... THE BAD (FA 033)』のディスク2でおなじみのソース。元はリール・テープで、録音機材は日本のAKAI製ステレオ・レコーダーが使われており、ステージから約6メートル離れた会場中央に高さ約70センチのスタンドを設置、これに2つのAKAI製モノラル・マイクを挿して録音した事が判っています。録音した人物がセミプロのレコーディング・エンジニアだった事もあり、その音質は明らかに素人が録ったものではない事が伺える抜群の音質と音像を誇ります。残念ながら4曲分しか陽の目を見ていないので存在感が薄く、主に補填用に使うサブ・ソースの位置付けでしか認識されていませんが、その全体像はヴィクター録音に迫るほどのクオリティを持っており、決して無視出来ない高音質録音です。



ちなみに【Recorder 1】は、前述の『VICTOR'S MONTREUX (Sigma 60)』(Victor録音。Interstellar Overdriveは2日目)、『SMOKING BLUESS (Funny Boot Records, FBR 001/002)』の3曲(Embryo、Just Another Twelve Bar、More Blues)です。

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...以上、ヴィクター録音が異常なほどの高音質を誇っている為に存在感が希薄になっているのですが、何しろアレをバックアップしていたソースですからどちらも隅に置けない高音質録音であった理由がお分かりになると思います。これらRecorder 2と3に注目して現代の最新機材と音響ソフトでリマスターし、ネット公開によってそのサウンドの存在意義を改めて世に問い掛けたのが、フロイド音源ファンお馴染みのNeonknight氏です。テープ・トランスファーは2016年8月に行っていた様ですが、彼は甲乙付け難いその両サウンドに惚れ込んでその後3年間も念入りに補正とリマスター作業を行うというHarvestedもビックリの音像調整を敢行。その結果両ディスクとも各Recorder史上最強の仕上がりが実現し、満を持した新しいサウンドの息吹きでRecorder 2と3が甦ったのです。

特にRecorder 2については既発盤『THE GOOD... THE BAD』に使用したリール現物から新たにテープ転送した上でレストアとリマスターを試みており(※ つまりCDの収録音をイコライズ再調整したのではなく、マスターに残る生原音をゼロから精査し直している)、Recorder 3についてもまずデッキのアジマス調整をした上でリマスターするという念の入れ様です。あまり聞き慣れないオーディオ用語ですが、アジマスの調整とは左右の出力が同位相になるよう再生ヘッド角を調整する事で、これによって再生ヘッドは出力が最大値となり正しい音像を結びます。前述の通りRecorder 3はモノラル・マイク2本で収録していますので、これにより正しく像を結んだ真のRecorder 3原音力が放たれる訳です。わざわざこの調整をしているという事はこれまでのRecorder 3が正しく音の像を結んでいない事に気付いているからで、そこにはこの両録音がヴィクター録音と肩を並べるほど優れた音を秘め、正しく調整すればそれを放てる実力を持っているという確信が読み取れるでしょう。

例えばディスク1で聴けるRecorder 2。ここで驚かされるのはキリッと鋭利な音の立ち上がりです。精査されたRecorder 2原音の解像度が増して中音域の向上感が出ているのを「Astronomy Domine」の冒頭から実感されると思いますが、中盤のか細く消えては浮上してくるシーンも左右チャンネルに更なる拡がりをお感じになる筈です。「Fat Old Sun」では歌声の伸びが増して鮮やかになり、バックで鳴っているオルガン、そしてシンバル打音の煌きが一層の明瞭感を発揮し、実際に当日のスピーカーから出ていたであろうリアルな生音の響きと鼓動を御愉しみ戴けるでしょう。また旧Recorder 2に比べてベースの音も+1ほど明瞭さがアップしている印象もあり、特に8:11から9:51付近まで展開するオルガンとリズム隊によるアンサンブルはリール原音から新しくトランスファーされた音の違いが判り易く出ています。「Cymbaline」では歌詞と音楽が歩み寄る姿が更に濃密なサウンドで放たれ、歌が一段落してアンサンブルがグッと出てくるシーンに顕著だった音像のアンバランスさも可能な限りまろやかになっており、その音像の安定感にもニンマリ頷かれる筈です。中盤の足音シーンも透明感が向上してハイヒールの移動音に奥行きと動きの変化が色濃く出ている為、終盤へ聴き進むほどそのサウンド・ドラマに惹き込まれてゆくのです。「Green Is the Colour」のギターの艶、流動感溢れるアンサンブルの滑らかさも特筆され、その品位溢れるリマスター・サウンドが「Careful With That Axe, Eugene」で徐々に聴き手に迫ってくる様子も、ヴィクター録音とは違う真新しい知の戦慄を覚えるに違いありません。

ディスク2はRecorder 3の登場です。僅か4曲分しか無いもののそのサウンドはヴィクター・ソースに肉迫するほどの高音質AUD録音となっており、今回のテープ転送にあたって正しくアジマス調整された原音の威力も存分に感じられるディスクとなっています。その成果は「Atom Heart Mother」から炸裂し、非公式音源ファンが恐らく最も好むであろう透明な至近距離音+程好い臨場感という理想のAUDサウンドが耳元で展開します。中〜高音域の拡がりにも注目で、これは5:11からギルモアのガイドボーカルで暫く進行する区間を聴くと分かり易いのですが、透明感と奥行きがこれまでのRecorder 3より増しているのも実感出来るでしょう。ドラムの打音も幾分エッジが増して鮮明になっており、コーダに至る過程で聴ける15:21〜の踊る様なタムの連打など、メイスンがこの曲で担っていた楽曲の躍動感が非常に掴み易くなっています。「The Embryo」は楽曲中盤、ブルージーな展開部でフックを多用するベースとオルガンの対比がますます際立つ音像で登場、後に「Echoes」に転用される事になる鳴き声の区間も音像が正しくチューニングされた事で音色の威力とスケール感が増しており、当日実際に耳に届いたであろう質の高いドキュメンタリーな響きが御愉しみ戴けるでしょう。「Careful With That Axe, Eugene」もその圧倒的な原音再現力が聴きモノで、音という言語手段によって物語と時間を構築してゆくプロセスが素晴らしいリマスターによって甦っています。残念ながらスクリーム後に約2分30秒ほど進んだ辺りで録音はブツ切れている(※ 恐らくテープの残量切れ)のですが、それもまたRecorder 3をありのままの姿で伝え切るという心憎い" 狙い "となっているのが判るのです。

実際にショウを観た方の話では、この時のモントルー会場は高さ僅か30センチ程度の低いステージだった様ですが、言い換えればこれは設置されたステージ上のスピーカーの位置も低かった筈で、音が目線の高さで直接ぶつかってくる事を意味します。会場中央に高さ70センチの位置でマイクを2本置き収録したRecorder 3が何故これだけダイレクトに直撃音を拾えたのか、それは恐らくこれが理由でしょう。一方のRecorder 2も演奏音が近いのは勿論、ここでは場内の残響や空間性を考慮した放送局が選びそうな安定感抜群の音像が極上のモノ・サウンドで甦っており、その業務用に録られたサウンド・ビジョンに強く魅了される筈です。

確かにヴィクター・ソースは他よりも突き抜けた傑出録音ではありますが、それ単体では決して完璧ではありません。あれをパーフェクトにしていた同日サブ・ソースの威力と魅力を知る事もまたこの70年モントルー初日のフロイドを更に深く理解する有効な鍵となり、レコーダー違いによるフロイド・サウンドのコレクションを最良の音質で充たしてくれるでしょう。サブ・ソースならではの、しかしもうサブ・ソースとは位置付けられない資質を備えた70年モントルーのアナザー・サウンドを今週末、是非御堪能戴きたいと思います。あの時代に失われた音楽と聴衆による一体性を別の視点で補完出来る、魅惑のSigma最新作です!!

★ナンバリング入りステッカー付でのリリースとなります。

Disc 1 (63:25)
Recorder 2: RTS Radio Broadcast, off-air recording

01. Announcer / Astronomy Domine
02. Fat Old Sun
03. Cymbaline
04. Green Is the Colour
05. Careful With That Axe, Eugene
06. Set the Controls for the Heart of the Sun

Disc 2 (41:58)
Recorder 3: Audience Recording.

01. Atom Heart Mother
02. The Embryo
03. Green Is the Colour
04. Careful With That Axe, Eugene